AIWA製のDR-2 データレコーダーは読み取り性能が高く、MSXでは倍速のロードが可能など、レトロPC全盛期の時代のデータレコーダーの中でもトップクラスの優秀なデータレコーダーですが、データレコーダーの特性上、構造がメカとゴムの組み合わせで動いているため、経年で必ず劣化してしまうことが難点です。
本記事では内部の電子基板が生きていることを前提として、メンテナンスと修理の方法をご紹介しようと思います。
まずは外装を外します
▼AIWA製 DR-2 データレコーダー

▼中央の矢印のある穴の奥にある背面のネジを外します。

▼底面の2か所のネジを外します。

▼ガワを外すためにEJECTキーを押してふたを開いておきます。

▼外側のカバーの底面を少し押して持ち上げる感じで外します。

内部の劣化ゴムの除去
この機種はテープカウンターのゴムが100%ドロドロに溶けて朽ちているので、気を付けてすべてを取り除きます。このゴムがとても厄介で、床に落としたりすると足の裏にくっついて家じゅうの床を汚しますので、IPA*1か無水エタノールでキレイに残っているものをふき取ります。
*1:イソプロピルアルコール、イソプロパノールと呼ばれるアルコールの一種。脱脂作用と強力な洗浄作用およびプラスチックを痛めない特性があるので、このようなメンテナンスや修理には欠かせません。
▼中央部に溶けたゴム

▼テープカウンターのプーリーにも

▼手に付くとえらいことになるので、ティッシュなどでくるんで捨ててください。

▼あっ!まだ溶けたゴム残ってた。

内部ユニットの取り外し
内部ユニットをケースから外すには、写真に写っている四隅のネジ、赤いねじ3つと左上の黄銅色のネジを外します。
▼左上のネジだけ色が違います。

▼前面カバーにつながっているスイッチ類の基板も外しておきます。こちらはネジ1本外せば外れます。

▼これで内部ユニットが外せました。電源ケーブルは外すと大ごとになるので、つけたままメンテナンスをしていきます。

▼細かなメンテナンスの前にテープカウンターを外しておきます。これを外しておかないとメンテナンス中にカウンターのレバーが折れたり、本体が壊れたりしますので後悔しないように外しておきましょう。実は昔修理中に何個も壊した( ;∀;)

▼もろいプラに頼りないねじなので、電動ドライバーではなく、普通の精密ドライバーを使って取り外しましょう。ちなみにここのねじ止め部分のプラは経年劣化等で9割がたひびがはいっています。

内部ユニットのメインゴムベルト交換
▼次に経年劣化で痛んで緩んだゴムベルトを交換していきます。メカ部分の中央付近にあるでっかい黒色のプーリーがメインプーリーです。

▼メインプーリーの向こう側にあるユニットに直付けされた、さらに大きなプーリーを押さえている金具のネジを外します。

▼こんな感じで

▼ネジが外れたら古いゴムベルトを外します。新品のゴムベルトに交換するので切ってしまってもよいのですが、新品のゴムベルトと大きさの比較をするためにあえて切らずに外します。


▼古いゴムベルトと新しいゴムベルトです。テンションを確保するため、伸びきった古いゴムベルトの2/3から3/4くらいの大きさのゴムベルトをチョイスします。

▼頑張って新しいゴムベルトをはめます。

ノイズシールド板の養生
▼次に基板上のノイズシールド板の養生の作業です。
ノイズシールド板はスポンジを挟んで両面テープで基板に固定されています。

▼外すとこんな感じ。

▼もうスポンジは触れただけでボロボロです。

▼基板に残っている両面テープをピンセットなどで除去します。

▼両面テープの除去が終わったら、同じ場所に絶縁のためのテープを貼っておきます。セロテープなどの経年でボロボロになるものでなければなんでもいいと思います。ここでは紙製のマスキングテープを使っています。

▼基板の絶縁がすんだらノイズシールドを同じ位置に貼り付けます。

再生用のプーリーのゴムの交換
▼中央にある再生用のプーリーのゴムを交換します。
このプーリーのゴムは経年劣化でひび割れと硬化を起こし、最終的に摩擦が減って再生ができなくなりますので、交換しておきます。
当然、純正の交換用のゴムなどあるはずもなく、代用品を探したのですが、直径14mm、内径10mm、幅2mmの水道工事用のSANEI水道補修用パッキンがベストなことがわかりました。
水道用のパッキンでも各社違いがあり、カクダイ、SANEIなどのいろいろなパッキンを試しましたが、今回写真にも写っているSANEI製の補修パッキンが成型の正確さやゴムの質の面で最も良いと感じました。

▼逆さにしてプーリーのゴムを外しやすくします。

▼これが結構難しいのですが、プーリーのプラスチックを痛めないように大型安全ピンの針先などでゴムを引き出し、引き出したゴムとプーリーの間にピンセットをはめ込むなどしてゴムを外します。

▼今回はもうゴムパッキンのサイズは把握しており、大きさを比べる必要は無いので作業を楽にするためゴムを切ってしまいます。

▼新しいSANEI製の水道用ゴムパッキンをうまいことはめます。プーリーの溝に沿って少しづつパッキンを押し込みつつ、プーリー回転させていくとうまくいくと思います。

▼うまくはまりました。

▼プーリーから出ているゴムの厚みも十分です。

ヘッドとキャプスタンとピンチローラーなどのテープ走行部分のメンテナンス
▼ヘッドはあまり触らない方が無難ですが、綿棒とIPAでの清掃は最低限しておきましょう。また、余りにも写真真ん中の再生ヘッドが錆っぽく曇っているようだったら、3000番以上の耐水ペーパーで軽く曇りが取れる程度に磨いてもいいかもしれません。
キャプスタン*2のシャフトもテープの走行時につく汚れなどでかなり曇ってますね。
*2:ピンチローラーと対になってテープを送るための回転するシャフトのこと

▼先ほどの3000番以上の耐水ペーパーを使って汚れたキャプスタンのシャフトを磨きます。データレコーダーを再生状態にして回転しているキャプスタン自身に磨いてもらいます。AIWA DR-2は倍速対応なので倍速スイッチを入れて再生して磨くと、研磨時間が半分で済みます。

▼何十年物の汚れを念入りに除去します。特にシャフトの根元が磨きにくいので、全体的に均一に磨けるように耐水ペーパーを動かしてください。汚れが取れてくると曇りや黒ずみが取れてピカピカになります。

▼キャプスタンのシャフト研磨後は、再生ボタンを押してピンチローラーが回っている状態でピンチローラー部分の右横部分にIPAをたっぷりしみこませた綿棒を押し当てて十分に清掃してください。

▼最後にテープカウンターを取り付けて新品のゴムベルトをはめます。カウンターはテンションをかけすぎるとハブ駆動軸に負担をかけ続け、再生や早送りに影響するので、それほどテンションをかけなくても引っ掛かって外れずに回っていれば大丈夫です。
テープカウンターの回転が渋いようなら、テープカウンターの内部にほんの少しだけシリコンスプレーなどをかけて潤滑をよくすると引っ掛かりなく回るようになります。これでメンテナンスと修理が完了です。

この記事では触れませんでしたが、目視でグリスが塗ってあるところは、固着を防ぐために古いグリスをIPAでふき取り清掃して新しいグリスを塗っておくとベストです。
金属しかない部分はリチウムグリス、プラスチックを含む部分はシリコングリスを使うといいと思います。
さあ、あなたも押し入れに眠っている昔使っていた懐かしいデータレコーダーをレッツメンテ!
( ´∀` )


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